ラビリンス・ヒーロー 004

「まだ私の話は終わっていないぞ」
「へいへい。なんでございましょーか。オレたち忙しいんで、手短にお願いします」
 これはショウザエモンではなく、キリマルだ。
「十歳児の割に素早い手の返し様だな」
「だって手伝ってもくれない人には用は無いですよ」
 サンジロウ。穏やかな顔をして、言うことは言うな。もちろん画像なしの通信だから、今本当に穏やかな顔をしているかどうかは判らない。
「まあまあ、ここは僕らが色々言わずに、言うだけ言わせておけば素早く終わるから」
 ショウザエモン。丁寧に随分な言い草だ。
「ちゃんと聞いてますよ」
「そうそう」
 トラワカとシンベエ。優しく言われると、逆にバカにされている気がするのは、気のせいか。
「さっさと言えばいいのに」
 ヘイダユウ。
「時間が勿体ないからねえ」
 イスケ。
「お前ら、良いご身分だな……」
「ゴミ!」
 キサンタが高い声で叫んだ。
「違うわ! ごちゃごちゃごちゃごちゃ喋ってるんじゃない! 私が喋れんだろうが!」
「まあまあまあ」
 唯一ランタロウだけは辛辣なものを感じなかった。
「はあ。ランタロウ、お前は……」
「なんですか?」
 子供らしく素直だな、と言おうと思ったが、
「何でもない」
 誉め言葉だか負け惜しみだか貶しているのだか判らないので止めた。
「とにかくだな、私はお前らに協力してやろうというのだ」
「ハァ? さっき嫌だって言ったばっかりじゃないですか」
「よく思い出せ、ダンゾウ。私は確かに御免だと言ったが、それはお前らのやり方に協力するということに対してだ」
「つまり」
「そう、つまりだキンゴ。私はお前らの持っていない情報を分け与えようと言うのだ」
 回線の向こうで騒がしく喋り続けていた1-ハが、シーンと静かになった。やっと人の話を聞く気になったか。
「その情報というのは」
 必然、声が小さくなる。周囲に人気は無いし、回線を除かれている形跡も無いし、何より聞かれて不味い話でもないために、声を小さくする意味など無いが。
 気分だ。そう、人知れず世直しをしているという、楽しげな気分。
 1-ハの誰かが唾を飲み込む音が聞こえた、ような気がする。
「とある行方不明被害者の、最終ログ地点」
 TAMURAはリストに入っていなかったが、あいつが消えてしまう直前の行動を考えると、被害者に仲間入りしていると考えて問題無かろう。
 もしも事件と関係が無かったとしても、1-ハがTAMURAの異常を調べることは私にとって有益だ。勿論、1-ハにとっても有益に違いない。イレギュラー調査は彼らの使命だ。

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