嘘つきへーくんと壊れた×× 『真実の証明は嘘』 005

四、過去の作為の記憶の形成

「あーちゃん、起きてる?」
 答えない。
「あーちゃん、おれのこと覚えてる?」
 答えない。
「同じ小学校の……」
 答えない。

「もう三日も何も食べてないよ」
「うん」
「寒いね」
「うん」
 微かな声で、うなずくようになった。

「明日は来るかな」
「たぶん」
「どうしよう」
「明日、多分、わたしの方が」
「わかんないよ。なにするか、わかんないもん」
「……お母さんいつ会いにくるかな」
「来て欲しい?」
「わかんない……」
「ねえ、もし明日あいつが来て……痛くしたらごめん」
「うん」
 声を潜めて話していた。
 すぐ隣に座っているから、囁くような声でもちゃんとお互い聞こえていた。
 むしろ、二人以外いない部屋の中だと、子供の小声でも大きすぎる気がした。

 その頃の自分たちは人間ではなかったように記憶している。
 小学生の頃だ。知らない大人に誘拐されて、それから逃げ出すまでの間ずっと。
 先に誘拐された彼女との再会。何も感じていない、人の足に何度も踏み潰されてぐちゃぐちゃにくたびれてしまった道端の雑草みたいになってた、あーちゃん。
 監禁された間は、犯人の家の中の二つの部屋だけが存在を許された場所だった。
 一つはなんにも色がない部屋で、空しか見えない高い位置に窓があって、朝になれば白くなって、夜になれば黒くなる、それだけの部屋だ。それは特別な部屋で、特別なことをするためだけの部屋だった。
 もう一つは、最初に放り込まれた、鉄格子の窓がある部屋。寝たり起きたり、時々食事をもらえたり、まあ、基本的な生活というものを送っていた部屋だ。
 生活というものの定義について少し考えてみる必要があるかもしれない。
 なにしろその生活というのは、朝も昼も夜も永遠と虐待を受け続けるというとんでもないものだったので。
 常識の問題。それは生活じゃない。でも、その期間を何とか生き延びたおれたちとしては、それは生活と呼ばざるを得ない。
 その部屋にいる間は、おれとあーちゃんは並んで縛られて座っている時間が一番長かったと思う。
 犯人が来るのはだいたい夜の短い時間だけだから、何も無い時間の方が長かった。何もない時は、ただひたすら空いた腹とズキズキ痛む体を抱えて、じっと座っている。後ろ手に柱に縛り付けられているので、動けない。
 おれたちは全く人間じゃなかった。なにしろろくに食べ物も飲み物も貰えなかったし、それを貰うために犯人に殴られてみたりとかしなければならなかった。単純な暴力じゃ、犯人はすぐに飽きてしまって、だからだんだん「おもしろいこと」を犯人は要求するようになったから、だからつまり自分自身見世物になってみたり、他の××を見世物にしたりとか。
 犯人が来ないとご飯が貰えないけど、来ると「おもしろいこと」をしなきゃいけない。どっちも嫌だ。だから犯人が側にいてもいなくても、どうせ嫌なことばっかりだった。
 そんなことを繰り返していると、頭がぼーっとしてくる。なんにも考えられなくなってくる。痛いとか気持ち悪とかお腹が空いたとか、わからなくなってくる。
 なるほど、最初に見たあーちゃんの状態と同じだ。
 だんだん、誘拐される前のこととかも忘れてくる。目の前にある、痛くない気持ち悪くないことが、すべてみたいだ。
 おれの隣にはあーちゃんがいた。小さい女の子のあーちゃんは、おれが来て暫くの後、少し自我と呼べるようなものを取り戻した。話し相手ができたからだろう。疲れきった精神でも、壊れきったわけじゃなかったんだ。その頃は。
 そうしておれを頼り切りで、痛くもなければ気持ち悪くもない、××も同じになった。
 逃げようと思えば逃げられたのに、と今になっては考えられる。おれは一人じゃなかった。犯人は、いつでも近くにいるわけでもなかった。「おもしろいこと」のためには、縄を解かれている時も多かった。でもおれたちは逃げ出さないばかりか、外を怖がるぐらいにはおかしくなってしまっていた。
 それは虐待の被害者にはよくある感覚だから、恥ずかしがることも悔しく思うこともない、と病院でお世話になったお医者さんが教えてくれた。
 そして最後のあの事件が終わって、おれは××の××が目の前で殺されたショックを脳にもろに受けちゃって、逃げ出した頃にはいよいよ頭の中が破綻してしまった。病院に閉じ込められる程度には、壊れてしまっていたようだ。自分じゃ、よくわからないことだけど。
 それからしばらくは、泥に沈んだみたいな息苦しい妄想の中で寝たり起きたりしていた。病院の中で、医者と薬とおれはその妄想と戦っていた。
 それが晴れた時に真っ先に考えたのは、あそこに戻ることだった。
 あーちゃんをあの部屋に残してきたと思ったから。
 だからおれは親にも病院にも何も言わずに、一人でこの町に戻ってきた。
 一人で逃げ出した記憶が、たぶん、おれが破綻した決定的な理由。
 おれは卑怯なやつだ。そう思うんだ。
 あの時、「逃げて、人を呼んで」って言われたから、おれはそうした。一人で逃げたのは、自分の意志じゃない。嘘だ。そんなの言い訳。おれは一人で真っ先に逃げ出した卑怯者なんだ。そうとしか、思えなかったから。当時も、今になっても。
 だからおれは戻って助けに行かなければと思って――他の被害者は、生き残った君のほかの被害者も、無事に保護されているよ、と医者や警察から聞いていたのに。
 当時の新聞なんかで調べても、確かにその通りみたいだった。
 わかっていた。理解できた。でも信じられなかった。
 何かの作為が、真実を隠しているのだと、根拠も無く信じている。

五、正義の裏側の好奇心

 斉藤タカ丸生首事件の直後から、無意味なメールが大量に届くようになってしまった。その、被害者たる斉藤君から。
 五限の授業中に来た一通目を皮切りに、本日最後の七時間目の終了時点で四十四通。内訳。一行のみメールが二十七、画像つきのが最初のを含めて六。おれが返した返信が一。
『うるさい』
 もちろんこれは嘘で、学校にいる間はマナーモードにしているので別に煩くはない。
 で、その返信が六行。内容は割愛。
 送られてくるメール全てが、絵文字を駆使した賑やかな仕上がり。とてもじゃないがおれと同程度の文明レベルの人間とは思えない。昨日今日の短い二日間での、奴の現代若者的メール技術の習得ぶりには、驚きを隠せなでいる。
 奴は恐ろしく暇なのか、依存症か何かなのか、それとも何か考えがあるのか。
 携帯を片手に深く考え込んでいると、勘右衛門が机の向こうから画面を覗き込んできた。
「相談に乗ろうか?」
「迷惑メールを振り分けたい」
「説明書を読め」
 生憎手元にない。
「まあ、そういう設定はいじってりゃその辺から出てくるって。機械苦手なの」
「まだ追いつかない」
「なに?」
「昨日買ったばっかりだから」
「携帯、触ったことも?」
「ない。なかった」
 また受信中の画面が出てきた。それから目を離さずに答えると、勘右衛門は少し息を呑むような真似をした。
 驚いた。気まずく思った。どうもそうらしい。罪悪感? 仕草はわざとらしく――でもない。
 考え過ぎ。お互い様で。
「友達?」
 話が切り替わる。勘右衛門の指が画面をなぞる。
 受信メールの差出人に斉藤タカ丸、との表示。
「知らない?」
 意外だったので、疑問で返した。
 奴は、そこそこの有名人である――と思っていた。少なくともこの地元では、おれと同じぐらいのレベルに。
「いや、全然知らない」
 勘右衛門はあっさりと答える。
 そういうものか。そういえば、おれも奴の名前を知ったのはつい昨日の話だった。存在は記憶してたけど。
 奴は八年前にほんの一言二言、言葉を交わしたことがあるだけの幼馴染である。その短いやり取りでは名乗る暇も無く、昨日までお互いの名前と顔は一致していなかった。どこかで聞いた名前ではあっただろうが。
「こいつから」
 受信中の表示から、受信メールボックスに切り替わる。新着の閉じた封筒の図が並んでいる。一行しかないメールは開けていない。開けなくても画面半分下のプレビューで読めるから。
「いらないメールが大量に来る」
「どれどれ」
 勘右衛門が机の向こうから小さなパネルを覗き込む。十字キーの下を押しっぱなしにすると、受信メール一覧がもどかしい速度でスクロールする。全部タカ丸からのメールなんだけど。
 そういえば、初めてにこういった構造のものを見たときは、変化するガラスの中身(実際はガラスじゃなかったけど)が気になって分解してみたな、などと数年前のことを思い出した。分解してみて出てきた機械片に感動を覚えたのも覚えている。それは人間の臓器と同じように、緻密で複雑で精巧だった。
 画面を覗き込んだ勘右衛門は暫く黙りこみ、ややあって困惑したように、
「返信の仕方はわかるの」
 と、離れたところからボールを投げてみる試みから始めた。
「流石にそれはわかった。返信したいんじゃなくて、来ないようにしたい」
「いや……だれ? これ? 友達じゃないよね……」
「幼馴染だから多分友達。多分な」
 勘右衛門は数回目を瞬かせ、目の前にいる奇異なものをなんとか理解可能な視界範囲に止めようとの努力をした。
 隙間なく並ぶ無意味な問いかけ。ずっと同じ表情の絵文字。一定のテンション。それしか入ってない受信フォルダ。奴のメールが、返ってくることを期待していない大暴投の連続だと、容易に察しがつくだろう。
 そしてそれが友達からのメールだって。
「異常性を感じる」
 勘右衛門は、包み隠さず素直な感想を述べた。
「なんで」
「いや、普通、授業中にどんだけメール送ってくるんだって話で」
「あいつ授業受けてないから」
「でもこっちが授業中だって知ってるでしょ」
「どうかな」
 高校生は授業の間はメールの返信を行うことができない、との原則を知っていたかどうかが怪しいところだ。タカ丸の常識の形成がそこへ至っているかどうかは特に確認していない。
「メール返さない相手にそんなに一方的に送らないでしょ」
「そう?」
「そうだよ。考えりゃ判るだろ。相手に聞こえる距離で独り言を叫んでるみたいなもんだ」
「奴は多分そういう趣味の人なんだ」
「友達?」
「幼馴染」
「でも迷惑メール?」
「あいつに携帯を持たせたのが間違いだった」
「依存症かストーカーでしょうねぇ。お薬もらいに行ってあげたら」
「今日は病院の日じゃないんだ」
「君の?」
「奴の頭の」
「あ」
 ぽん、と右の手のひらでおれの机を軽く叩いた。丸くした目で。
「思い出した。斉藤タカ丸。あ、知り合いか。そうか」
「そうなんだよ」
 適当に相槌を打ってみた。勘右衛門が思い出したっていうのが、いったいどんなテレビのニュースだか新聞記事だか近所のおばちゃんから発生した噂だか知らないが。
「ちょっと携帯貸して」
「いいよ」
「いいのかよ」
 そう言いつつも、好奇心に目をぎらつかせた勘右衛門はひったくるような勢いで携帯を受け取り、猛烈な速度でキーを操作し始めた。
「暗証番号とか設定しないの」
「あえて隠さない主義」
「はん」
 画面だけ見て鼻で笑った。別におかしくも何もない時に、お愛想で笑ってあげる作法。場を繋ぐためだけの意味のない質問、聞いちゃいない答え、無意識の反射で帰ってきた愛想笑い。嘘だらけ。
「見ろよ」
 突き出された携帯の画面には、一通目のメールの本文が表示されていた。
 本当はその前に、体育の授業中に来た生足のアレがあった。それは個人的な感情と万一のための情報戦略として消去した。だってあれあきらかにあーちゃんの足だったし。関係を疑われると困る、かもしれない。容疑者として。
 そんなわけで現在の一通目は、開けてもいなかった短いメール。本文と件名合わせても二十字に満たない内容だ。
「『ちゃんと読んでね』で、矢印二つ。こっち向き」
 メールの末尾に挿入された赤い上向きの矢印をなぞって、勘右衛門の右の人差し指が画面上を上にスライドする。
「本文の二つ上の欄は『件名:最後まで』」
「最後までちゃんと読んでね」
「つまり最後って、何のことだ?」
「今後のメールをちゃんと読めって、そういう意味じゃないのか」
「違うんだよなー違うっぽいんだよなー」
 勘右衛門は急にニヤニヤと笑いながら、再び携帯の画面と向き合った。
「二つ上の最後まで、な」
「絵文字?」
 件名の最後に、黄色い三日月の絵文字が入っている。
「『月』だ。内容と関係ない絵文字。送信日時も真昼だ。まずここで違和感覚えなきゃ、名探偵にはなれないな」
 残念ながら、そういった予定はない。
「ひとまず、月。で、二通目の件名が『アイスとチョコのどっちがすき?』末尾は『ケーキ』」
 本文なし。奴とアイスやチョコレートの話などしたことはない。変なメール。
「で、次のメールの最後に『手紙』」
 勘右衛門が人差し指で空中に横長の長方形を描いた。三角形の折り返し付き。
「メールじゃなくて?」
「ざっと読んでみたら手紙の方っぽかった」
「なんだ、それじゃもう全部判ってるのか。結論から話せよ」
「それじゃつまらない。推理シーンは手順を追って、親切丁寧に読者への解説をしないと」
「そろそろ家に帰りたいんだ」
 おれがそう言うと、勘右衛門は深刻そうにニヤリと笑った。
「この暗号は重要な情報になる」
 重々しく言った。古い洋物映画の探偵のように。
「で、内容は?」
 そしておれはその出鼻を挫く。段々このやり取りが楽しくなってきた。
「お願い解説させて」
「手短に」
「はいはい。いや、お前の話なんだよ? これはさ、縦読みだよ」
「なにそれ」
「絵文字の頭文字を立て読み。まず最初の『月』『ケーキ』『手紙』」
「つ、け、て」
「そうそう。で、次が『宝石』。多分これ、『ルビー』のつもりだと思う。赤いし」
「つけて、る?」
「『蛙』『笑顔』『リボン』『耳』『チケット』『ニヤリ』『木』『お酒』『月』『ケーキ』『ロケット』。わかった?」
「ちょっと待て、一気に言うなよ」
「か、え、る、え、が、お、り」
「そうじゃない」
 おれは勘右衛門の手から携帯を奪い返した。
 びっしり並ぶ意味のない受信メールをスクロール。件名の最後に絵文字が入っているもの、入っていないもの。最初の絵文字は、確かに勘右衛門の解説通り一通目の『月』。
 その後、連続して、あるいは間隔を開けて、件名の最後に絵文字が挿入されている。
「どうしてこのおれがその暗号に気がついたのか? そこからお話しよう」
 つ、き。
 け、ーき。
 て、がみ。
 る、びー。
「ま、普通に絵文字の使い方がちょっと変だってのは気づくだろ」
 か、える。
 え、がお。
 り、ぼん。
 み、み。
 ち、けっと。
 に、やり。
「件名だけ流し見してても、内容と関係無いのに繰り返して使われてる絵文字が目に付くわけだ」
 き。
 お、さけ。
 つ、き。
 け、ーき。
 ろ、けっと。
「もしや暗号か、とね。つまりここが名探偵の勘の見せ所なんだけど、もしやと思うのが大事なんだ。半信半疑でもとりあえず考える。暗号の定石として、まず最初に解読方法を相手に提示しておかなければいけないわけだから、なら最初のメールで」
「付けてる。帰り道、気をつけろ」
 なるほど、この暗号を貫き通すために、意味不明のメールを大量に送ってきていたのか。依存症というわけじゃないらしい。
 おれが話した証拠物の話をかなり気にしているのか。メール等のデータは後に残るから、押収された際に足が着く、等々。
 しかしそれならさっき会った時に口で言えば良かったのに。
「聞いてた?」
「見る前から、気づいてたんじゃないのか」
「え? 何を? メールを?」
「暗号。確信して携帯を奪った」
「ああ」
 心底嬉しそうにニヤニヤ笑いながら、勘右衛門はおれの肩をポンポンと叩いた。
「期待してるんだよ、君には。最初に言っただろ」
「転校初日の?」
「お前からは事件の香りがする」
 やっぱりとんでもない奴だ。
 後でタカ丸に言っておこう。おれより先に暗号に気づいた奴がいるから、せこい小細工なんかやめとけって。
「しかし兵助くんよ、どうすんだこれ。暗号。ストーキング宣言。闇討ち予告か? 夜道に気をつけろ的な」
「どうしようか。結構困る」
 嘘だけど。
 だってこれあいつがおれを付けてるって話じゃないだろう。誰かが付けてるからって、警告だ。
 まあ面白い誤解なので訂正しない。
「兵助君、やたらとストーカーからモテるね。数日前にも後輩の女の子がいたよねー」
「変態との縁がやたらあるのはもう諦めてる」
 まあ親からしてアレだったわけですから。
「で、どうする? 一人で帰れる? 夜道が不安ならこの探偵役のおれがついて行ってやろうか」
「まだ夕方なんだけど。探偵役って何の話」
「ほらほら、帰り道で事件が起きて、殺人鬼と出くわすかもしれないじゃん」
「それは、無いな」
「何でだよ」
 つまらなそうに、むくれる。
 こいつの他人事のテンションが結構楽しい。視点の置き方がおれと似ている。多分ものすごく気が合う相手なんだと思う。おれは当事者で、こいつは部外者なのに。
 そう思うと、ちょっとからかってみたくなるから。
「お前に見られながら犯行ってのは気が進まない」
 なんて嘘をついてみる。
 勘右衛門の顔が引きつった。一瞬のうちに、不意打ちの嫌悪と期待が顔面の筋肉を引っ張った。昼におれを容疑者と呼んだのは、こいつだった気がするんだけど。
「まさか」
 と、勘右衛門の短く口から漏れてしまった声。
「まさか」
 と、おれは繰り返し強い否定を述べる。
「冗談だ」
 こんな嘘を信じるかどうかは別として。殺人鬼が今日現れない理由は、いくつかある。恐らく、その全ての理由を知っているのはおれだけだ。警察も尻尾はつかんでいない。
 しかし探偵を目指す尾浜勘右衛門クラス委員長はそのうち勝手に気がつくだろう。意外と的を得た推理なんかしてしまうかもしれない。悪くはない。だがその前におれは犯行を済ませたい。
 でも今日は無理そうだ。
「帰る。じゃ、また明日」
 フリーズした勘右衛門の横を素早くすり抜け、がらんどうの教室を出た。同級生ら数人の目撃情報があった。気にしない。
 日が落ちてきている。校舎の白い廊下が眩しいオレンジ色になっていた。
「ちょっと待て!」
 背後から勘右衛門の大声が付いてきた。

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