悪党たち 七
「まずは状況を整理しよう」
きり丸は、まず子供たちにそう呼びかけた。
この閉鎖的な村の様子そのままで、子供らにもどこか閉鎖的な眼差しがあった。じっと、値踏みするような目が沢山、きり丸を見つめていた。
子供たちが留守を任された、空の村の空の村長の屋敷、その一室。
屋敷の入り口では、兵助の目論見通り見張りの二人が眠りこけてたままだった。
「なんだよ」
きり丸でさえ少し、怯む。
「だれだお前」
「なんだお前」
と、口々に子供たちが言うので……二十人ぐらいの口が、同時にわーっとそう言うので、きり丸と隣に並んでいたしんべヱは、いよいよ冷や汗が出てきた。
あの宿の息子に、一人二人ぐらいは連れてきていい、なんて言ったばっかりに、当然の流れとして村の子供ら全員の前に立つことになってしまったのだった。
「しずかにしろよ! 話ができねえだろ」
弱り切った二人の代わりに、宿の息子が声を張り上げた。
すると、水を打ったように……とまでは行かないが、子供たちは大声で騒ぐのを止めた。まだ不満そうに唇を尖らせているが、どうやらこの少年は子供らのリーダー格らしい。
「で、誰なんだお前ら」
「えー、いや、その前に状況の整理をですね」
「自己紹介からだろ、こういう場合」
「そんな和やかな場合かなぁ」
「な、しんべヱ。そういう場合じゃねえっての。こうしてる間にも戦は進行してるんだぜ」
「信用出来ない奴らと話しなんかできるもんかよ」
「ま、そりゃそうだ。手短に言うと、おれはきり丸。こっちはしんべヱ」
「よろしく」
「怪しくない旅人だぜ」
「の、フリをした盗賊か?」
「ちがうって」
言いながら、きり丸ははてと首をかしげた。どこまで話せばいいものか、どこまで話していいものか。
身分を証明するなら、自分は忍者の卵、忍たまですと言うのが手っ取り早いが、大声で忍者が忍者と正体を開かしてしまうのはよろしくない。
かといってそこを名乗らなければ、自分たちの身分が証明できない。
どうしたものか?
「あのねえ、ぼくら忍たまなの」
「えーっ」
あっさりと、しんべヱがばらした。
「言う方向かよ!」
「言わなきゃどうしようもないよ」
深い考えがあってかどうか、しんべヱは気の抜けた様に笑いながら言うのだが、その様子を見ていると、確かにそうかもしれない、と思えてくるから不思議だ。
「そうだな、嘘ついてもしょうがないよな。オレたちゃ、忍者の卵の忍たまさ」
「忍者の卵ぉ?」
「ま、ほぼ忍者だね」
「そうそう、ほぼプロ忍者に近いよね」
きり丸としんべヱは眉をきりりと釣り上げて、胸を張った。ちょっとした見栄だ。
「そうは見えねえが」
「そうは見えないようにしているのが、一流の忍者ってもんだ」
「馬鹿なこと言ってんじゃねえよ。お前らと一緒にいたあの悪そうな兄ちゃんならともかく、気の抜けたサイダーみたいな顔してるくせに忍者も一流も糞もあるわけねえ」
「なんだと!」
「やるか!」
「ちょっとちょっと、喧嘩しないの」
しんべヱがつかみ合いになりそうな二人を引き離す。
「まあ、つまり忍者の卵忍たまなの」
ふーん、と子供たちはそれぞれ頷いたが、全く信用はされていないらしい。
「その忍たまってのは、何をする人なの。何をしに来たの」
子供らの中の痩せて目付きの鋭い女の子が、大きな声で言った。
「えーっとね、忍たまは忍術の勉強をしていて」
「お前らを助けに来たんだよ」
子供たちがざわめいた。