現代パラレル 009
※現代パラレル(設定)
機械音痴と機械オタク。
とてもそうは見えないようだが、僕と文次郎は前者で、小平太と仙蔵は後者だ。長次は多分無難な辺りにいる。
僕は課題でパソコンを使うことは結構あるが、それ以外では殆ど触らない。写真を加工する時に使うソフト以外の事は全く判らない。というかどうしてあの黒い箱が電力を消費して様々な行動に出るのか、よく判っていない。しかし使えればいいのだ。
文次郎は論外だ。彼に扱えるのは携帯のメール機能までだ。この間まで携帯でカレンダーが見れる事を知らなかった。下手に触って壊れると嫌だ、と。判らなくもない。
そして小平太と仙蔵の話なのだが。
「電気代が酷い」
と仙蔵が言った。じゃあ節約か、という話になったのだが、
「何を?」
暖房、冷房の必要な季節ではない。乾燥機が無くても充分洗濯物は太陽の下で乾いてくれるし、住民が(つまり僕らが)夜遅くまで外で活動している事が多いために夜間の照明もそんなに使ってないはずだ。毎日コンビニ弁当で電子レンジを多用するとか不思議な事もしてないし。
じゃあ何なんだ、と文次郎が不思議そうに呟いたところに、長次がポツリとパソコンの電力消費について語った。
殆ど聞こえなかったが要するにパソコンっていうのは電力を食うらしい。全然知らなかった。
というわけで話題はパソコンについてになった。ちなみにここは学食だ。
「そもそも何でパソコン使うんだ? っていうか何に使えるの?」
「ニュース見たりとか、色々情報があるからさー、便利なんだよ」
「ニュースだったらテレビでも見れるだろうが」
「テレビ見たら結局電力掛かるんだがな」
「そもそもニュースやってる時間に居間にいないとダメじゃない? 深夜帰ってきて早朝出て行くとテレビとか見れないし。それにねー、テレビでやってる以外にも世界中では色々起こってるんだよ」
と小平太は浪々と話し出した。朗々、というか結構勢いよくだが、こんなに真面目に彼が喋っているのは珍しい気がする。そういえばジャーナリズムに興味がある風な事を言っていた事がある。
「じゃあ仙蔵は?」
「課題。あとは小平太と同じだな」
「課題だったら僕もパソコンでやるけど、そんなに時間掛かる?」
「音楽は、ものすごく時間が掛かるんだ。次の公演の作曲もしないといけないし」
食っていたパンの最後の一欠片を口の中に放り込んで、青い顔をしてうっすら笑った。
仙蔵は大抵いつも青白い顔をしているが、今日は少し黒い。青くて暗い感じがする。
「寝てる?」
「あんまり……」
じゃあ課題とこっちの作業をサボって寝たら、電気代も抑えられるし健康だしいいんじゃないかと思ったが、それも酷な気がして言わなかった。長次がうんうんと何故か頷いた。文次郎はよく判っていないようだった。
ただそれだけの話なんだけど。