現代パラレル 001

※現代パラレル(設定)

 舞監中在家長次の様々な苦労について。


 脚本、七松小平太。
「できたよ!」
「……三ページ?」
「何かニュアンスとかで書いたから。文次郎なら判ってくれるよ」
「…駄目……」
「なんだよー」
「ちゃんと戯曲に……」
 繰り返し五回。
 完成後。
「キャスト……手直し……」
「キャストに合わせて直すんだよね。判ってるよ! ちゃんとやってるって。」
「……明日まで」
「四日後がキャストの顔合わせだからその日持って行くよ!」
「駄目……」
「えー?」
「早く」
「だって俺、明日池袋で踊る予定だもん! 長次も出る!?」
「無理……」
「そっか、残念だね」
「……本」
「大丈夫! 顔合わせまでには出せる!」
「明日が…無理…ら、今日……今すぐ」
「むりむり」
「……いけいけどんどん……!」
 深夜四時無事回収。


 演出、潮江文次郎。
「だからな、このシーンで主役が飛ぶんだよ」
「飛べない……」
「気合いだ!」
「……無茶」
「いや、装置に掛け合って見ないとわからん」
「自…で方法を考…て……を言え」
「装置がそれは考えるだろうが」
「時間の…駄……主役……前だった…どうす……もり…?」
「うっ」
「でき……ものはでき…い」
 話し合いは深夜まで続く。


 作曲、立花仙蔵。
「BG……提出し…」(注 BG=バックグラウンドミュージック)
「私は十日後の試験で忙しい」
「忙……のはみん…同じだ」
「私は実技試験だ! 私の真価が問われる大事な試験だぞ」
「他の…ンバー…実技…験は一緒…」
「音楽科は忙しいのだ。それに、BGなど本番に間に合えば良かろう」
「!!!」
「ふん。私は暫く稽古も休むぞ」
「不破…一番困……後輩に向…る顔が……」
「……」
「情…ない先輩……」
「……」
「仕事…できな…先輩……」
「私は仕事も完璧だ!」
「……提出」
「明後日には出す!」
 二日後無事入手。


 制作、善法寺伊作。
「あ、長次。探してたんだよ、丁度良かった」
「……?」
「制作の予算表と仮チラのデザイン。今回は斉藤君に頼んでみたんだけど、どう?」(注 仮チラ=仮のチラシ。大抵白黒コピー。身内などに配られることが多い)
「……!!」
「いい感じなら本チラと当パンも彼に頼むよ。予算が結構余ってるから、今回豪華な事できそうだよ。あとね、稽古場で新しくいい場所見つけたんだけど、今更変えるのってどうかなあ?」(注 本チラ=本チラシ。普通に貼ってあったり配ったりするフルカラーのもの。当パン=当日パンフレット。普通当日以外のパンフレットはない)
「大丈夫……」
「そう? じゃ、取れる時期判ったら知らせるね。差し迫ってるのってこれだけだよね? あれ? 長次どうしたの?」
「伊作……」
「な、何? まだ何か忘れてることあったっけ……」
「……えらい!」
「え? え?」
「小平太……文次郎……仙蔵……」
「……そっか……大変だったんだね……」
「まだ……続く……」
「うん……あ、今日一緒にご飯食べに行こうか?」
「忙し…から……」
「……がんばってね……。でも長次の舞監のおかげで、僕らもってるようなもんだからさ。みんな感謝してるんだよ」
「……がんばる…」

 舞台が無事に幕を降ろすまで、いや降ろした後の打ち上げが終わるまで、舞監中在家長次の苦労は続く。

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